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[痴漢3    :]
 
  




司の肛門に触れた男の指は、なかなか中に入ってこなかった。
まるで焦らすように、微かな動きで小さな穴の周囲をなぞったり押したりしている。
司のすぐ耳の側から、ハアハアという男の荒い息遣いが聞こえてきた。
体を触っている男が、興奮しているのだと司には分かった。

こんな見ず知らずの中年男に、恥ずかしい部分に触れられている嫌悪感が改めて司を襲う。
力の入らない体を何とか動かして、司はそこから男の手を少しでも離そうと腰を引く。
けれど満員の車両の中では、さして効果はなく、男の指はピッタリと貼り付いて離れない。
それどころか、背後にいる尾沢に体を男の方へと押し出されてしまった。
その上、両脚の間に差し込まれてた尾沢の脚が、司の脚を器用に割り拡げていく。

「っ……ん……!!」

広がった空間で、男の指の動きが大きくなった。
爪の先で、穴を引っ掻かれ、司は思わず声が出そうになり、必死でそれを飲み込んだ。

その時、電車がカーブに差しかかり、車両が大きく揺れ動いた。
電車の揺れに詰め込まれた人々の間から、ウワッとかキャアとかいった声が上がる。

「ひっ…ぃ……っ!!」

ズプリと、男の指が司の穴に差し込まれた。
司の上げた小さな悲鳴は、周囲の音に紛れて誰に気付かれることもなかった。
遠心力で体が傾ぐ中、男が司に寄り掛かるようにして覆い被さってくる。
男の指が、その姿勢を利用して、深々と体内に差し込まれた。

「…あ…っ、あ…っ………やっ……あぁぁ……っ」

指は届く限り奥まで差し込まれ、その後はピタリと動かなくなった。
中に入ってきた指は1本だけだったが、司に強烈な異物感を与えた。
指は動かないのに、司は下半身が熱く痺れていくのを感じていた。
車両内の熱気だけではない暑苦しさで、司の呼吸はどんどん早くなっていく。

電車がまた駅のホームに停車し、反対側の扉が開いて客が乗降をしている。
その間、司は周囲に気付かれないように息を殺し、銜え込んだままの指の異物感に必死で耐えていた。

電車がホームを発車する。
それを合図に、司の中に入り込んだ指がついにうごめき始めた。

「…ん……ぅ…っ…っ…………っ」

男は電車の揺れや音を利用して、巧みに指を動かして司を攻め立ててくる。
指の腹で中の壁を擦ったり、グルグルと掻き回したりされて、司はヒクヒクと体を跳ねさせた。

「……はぁ……っ、あ…っ………ん…ひ……っ」

男の開いているほうの手に、突然右手をつかまれて司は驚いた。
手は強引に導かれ、男の股間の膨らみへと押し付けられる。
スーツのズボンの上からでも、男のペニスが勃起していることがはっきりと分かった。

その汚らわしい欲望を、布越しとはいえ手に押し付けられて、司はゾッとする。
男は司の手にグイグイと股間を押し付けてきた。
司の耳元で聞こえていた、男の息遣いが更に切羽詰まったものになっていく。

男の感触も体温も体臭も、全てが気持ち悪かった。
けれど抱かれることに慣れた司の体は、気持ちとは裏腹に刺激に流されて体温を上げていく。

「んあ…っ………ぁ…あっ、……あっ……っ」

ズボンに差し込まれた男の腕にペニスや袋も擦られて刺激されている。
奥の穴に差し込まれた指は、何度も何度も執拗に内壁を嬲ってくる。
司は自分のペニスがまた硬く勃ち上がっているのを自覚していた。

こんな痴漢に感じたくなんかないのに、体は勝手に煽られていく。
駄目だと頭では分かっていても、更なる快感を求めて、無意識のうちに腰がくねってしまう。

そう、こんな痴漢にではなく、背後で傍観している薄情な男に、今すぐにでも抱かれたいと体が疼くのだ。
尾沢は、司をこんな痴漢に差し出している酷い男だ。
けれど、欲情したこの体は、尾沢の太く熱いペニスで貫かれたいと疼いている。

体の昂ぶりに朦朧としながらも、情けなさに涙が溢れそうになった時だった。

「次で降りるぞ」

不意に、司の頭の上から、尾沢の声が告げてきた。
同時に、司を嬲っていた男の指がズルリと体内から引き抜かれる。
つかまれていた手も解放された。

司は強張らせていた身体の力をゆっくりと抜いた。
陵辱の時間が、やっと終わったのだ。
震える手でなんとかズボンの前を閉じ、司は安堵の息をつく。

次の駅に到着した電車のドアが開くと同時に、司はホームに降りた。
人込みの圧迫感から解放されて、司は外の空気を胸に吸い込んだ。
火照って汗ばんだ体に、屋外の空気が冷たく感じた。
脚は力が入らなかったが、なんとか倒れずに立っていることが出来た。

乗り越しの清算を済ませた尾沢に、フラフラする体を支えられて改札口を出る。
司はそのまま尾沢に駅の便所に連れていかれた。
駅から続く高架下にある小さな便所だった。
多分、ここで尾沢にされるのだろうと司は思った。

けれど司は心底ほっとしていた。
あの中年の痴漢に触られるよりも、尾沢に触られるほうが何倍もマシだと思った。

マシどころか、やっとこの体の奥に燻る熱を、思いきり放出させることができる。
尾沢の逞しいペニスで、尻の奥を突いて、捏ね回して貰える。
そう考えただけで、司の体の芯が、与えられる快感を思い疼いた。

人の出入りが途切れたのを見計らって、奥の個室に連れ込まれる。
窮屈な個室の中で、司は尾沢に抱き締められた。

「あ………ん……ぅ…っ」

そのまま顎を取られて唇を貪られる。
司は逞しい胸に身を預け、されるがままにキスを受け止めた。
熱い舌に口内を舐め回されて切なげに鼻を鳴らす。
体の奥の疼きはどんどんと膨れ上がっていた。
早く貫いて捏ね回して欲しくて、司は尾沢の背に腕を回し、ねだるように体を擦り付ける。

すると、背後でもう一度個室のドアが開いて閉じられる音がした。
すぐ側に人の気配を感じて振り向くと、そこには男が1人立っていた。
先程、司に痴漢行為をしていた中年男だった。

「…………っ!?」

脂ぎった顔が、ニヤリと淫猥な笑みを浮かべている。
何とも言えず気持ちの悪い、嫌な表情だった。
値踏みをするように細められた男の目と目が合って、司は全身の皮膚をいっせいに粟立たせた。

「さあ、司ちゃん、お仕事の時間だよー」

呆然とする司の耳元で、尾沢の声が甘く囁いた。


   
   つづく



 


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